日本歯科衛生学会でポスター発表をしました
協会関連
2019年9月14日~16日に愛知県名古屋市の「ウインクあいち」にて、日本歯科衛生学会第14回学術大会が開催されました。
大会テーマ「治し支える歯科医療をめざして」
詳細は、日本歯科衛生士会HPへ
当協会では、
「職域口腔保健活動における咀嚼能力検査の試み」という演題で、ポスター発表をいたしました。
発表内容をご紹介いたします。
目的
2018年度より特定健診の質問票に咀嚼に関する項目が新設されたことから、職域口腔保健活動においても口腔衛生管理に加えて口腔機能管理に着目した支援が重要になっている。そこで、職域成人の咀嚼状態を把握するため、咀嚼能力検査システムによる数値結果と特定健診の質問項目による回答状況を調べ、若干の知見を得たので報告する。
対象および方法
調査対象者
2018年12月に職域口腔保健活動に参加したA健康保険組合の被保険者203名。対象者の年齢階級別内訳は(表1)のとおりである。
倫理的配慮として、本研究は同意が得られたA健保組合から、匿名化したデータの提供を受け、これを分析に用いた。
表1 対象者の年齢階級別内訳 203名
調査項目
1. 質問票 (特定健診質問票の咀嚼に関する項目)
「食事を噛んで食べるときの状態はどれにあてはまりますか」
以下3つの選択肢より1つを回答
① 「何でも噛んで食べることができる」
② 「噛みにくいことがある」
③ 「ほとんど噛めない」
2.咀嚼能力検査(グルコセンサーGS-Ⅱ(R)/ジーシー 使用)
グルコース濃度による咀嚼能力分類基準 (※参考:GC資料)
① 100mg/dl未満~:噛む力が低下している
② 100~150mg/dl:噛む力がやや低下している
③ 151~179mg/dl:噛めている
④ 180mg/dl以上~:よく噛めている
調査方法
1.質問票 直接本人から聞き取り記録した。
2.咀嚼能力検査 2gのグルコース含有グミを20秒間自由咀嚼した。
咀嚼後10mlの水を含み、メッシュ上に吐出させ、メッシュを通過した溶液中のグルコース溶出量を咀嚼能力検査システムにて測定した(図1-1・1-2)。分類は上記の4分類とした。
結果および考察
質問項目の「何でも噛んで食べることができる」と回答した者は全体で93%(男性93%、女性92%)であったが(図2-1・2-2)、咀嚼能力検査の結果は、「よく噛めている」39%、「噛めている」25%、「噛む力がやや低下している」30%、「噛む力が低下している」が6%であり、やや低下、低下を合わせて全体で36%であった(図3-1)。そのことから本人の意識と咀嚼能力検査の結果には大きな違いが認められた。また、男女の比較では女性が男性より噛む力がやや低下、低下の割合が高く、年代別では20歳代、30歳代の若い世代においてもやや低下、低下の割合が約30%であった(図3-2)。
本調査対象者は、職域口腔保健活動の継続参加者であることから、現在歯数が多く、口腔状況も良好な者が多いが、約3分の1の者に噛む力の低下が認められた。
咀嚼能力検査の結果、「噛む力が低下している」、「噛む力がやや低下している」に該当した者に日頃の食習慣について質問したところ、
などの回答があった。
結論
今回の調査結果から、職域成人では、質問による回答結果と咀嚼能力検査の結果が大きく異なり、咀嚼状態に問題意識を感じていない者が多い
ことが確認できた。また、咀嚼能力は数値で表すことにより、よく噛むことへの関心を高める動機づけになることがうかがわれた。そのため成人期においても口腔衛生管理に加え、咀嚼機能を維持するための支援が必要であり、早い段階で気づきを与えることが重要である。今後は職域口腔保健活動においても「よく噛んで食べること」および「食品の摂取状況」等の実態を把握し、咀嚼支援を推進する必要があることが示唆された。
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
お問合せ:一般財団法人 日本口腔保健協会 鈴木慧子
TEL 03-3818-4158