「健口チャンネルⅣ」~スポーツと歯科~
健康情報
いよいよ今週23日、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。
オリンピック・パラリンピックでは医療スタッフとして歯科医師、歯科衛生士も派遣され、選手たちを歯科医療の立場からサポートしています。
オリンピックでの歯科サポート
メディカルチェック
内科、整形外科に加えて歯科のチェックも義務化されています。
競技前の歯科治療
むし歯や詰め物の不調、親知らずなど口腔のトラブルで競技に支障が出ないよう、事前に治療を行います。
外傷対応
歯の破折、顎骨骨折などの応急処置を行います。
スポーツにおける歯科の役割
選手村には各科の診療施設が設置されていますが、その中のひとつに歯科があります。
なぜ、歯科診療施設が必要なのでしょうか?
咀しゃく機能(噛む能力)の維持
アスリートはスポーツドリンクを多量に摂取するため、口腔内が常に酸性に傾き、むし歯のリスクが高くなります。歯の痛みがあると十分なパフォーマンスを発揮できません。
また、アスリートにとって食事管理は欠かせません。むし歯や歯周病がなく、きちんと食事ができる口腔を維持することが、からだづくりの基礎となります。
咬合バランス(噛み合わせ)の維持
グッと噛みしめることで、力をこめたり、踏ん張ることができます。特に奥歯での噛みしめが筋力の発揮に効果的であると言われています。奥歯が抜けていたり、むし歯や歯周病でその力に耐えられない歯があっては十分な力が発揮できません。
さらに、しっかり噛み合う歯がないと、下顎が固定されずに頭が動いてからだの軸がぶれます。噛み合わせを安定させることで、からだの軸も安定します。
体操、フィギュアスケート、射撃、アーチェリーなどバランス感覚が重要な競技では、少しの乱れがパフォーマンスに大きく影響するため、咬合バランスの維持が欠かせません。
スポーツマウスガード(マウスピース)
スポーツマウスガードには、強打による衝撃を和らげ、歯や口、顎を守る働きがあります。
また、脳震盪の発生率や重篤度を下げる効果も報告されているため、ボクシングやラグビー、サッカー、バスケットボールなど接触の多いスポーツ(コンタクトスポーツ)ではマウスガードの装着が推奨されています。
市販品もありますが、合わないマウスガードを使用すると顎の関節を痛めたり、集中力が低下することもあるため、それぞれの口腔に合わせたマウスガードを製作します。
咀しゃく機能(噛む能力)や噛み合わせを維持することの重要性
咀しゃく機能が低下すると、固いものが噛めなくなり、食べられる食品が偏るため栄養バランスが乱れ免疫力の低下に繋がり、生きがいのひとつである食べる楽しみが減ってしまいます。
また、重いものを持ち上げる時に、歯をくいしばることでより力を発揮できます。噛み合わせがなくなるとバランスが取れずふらつき、奥歯がないと踏ん張りがきかず転倒し、ケガに繋がります。
健康な口腔を維持するためには…
セルフケアとプロフェッショナルケアの両立が重要
かかりつけ歯科医で定期的な口腔チェックと専門的歯口清掃を受け、毎日のセルフケアで維持していきましょう。
力のコントロール
スポーツマウスガードとは異なりますが、歯ぎしり・くいしばりを予防するためのナイトガードがあります。
就寝中の歯ぎしり・くいしばりは、体重と同程度以上の力がかかっているため、顎の関節を痛めます。また、歯に大きな力がかかると、歯が欠ける、割れる、すり減るなどのほか、知覚過敏の原因にもなります。
歯ぎしり・くいしばりが気になる方は、歯科医院で相談してみましょう。